Monozukuri Education 学校×企業・大学の新ものづくり教育

【パートナーインタビュー】究極の軽量化に挑む! 広島工業大学 学生フォーミュラチームに聞く「ものづくり」の醍醐味

広島工業大学

中高生のキャリア形成を支援する本企画では、ひたむきに活動に打ち込む先輩の姿を紹介します。今回は、学生が自らレーシングカーを設計・製作する「学生フォーミュラ」に挑む、広島工業大学(広工大)のHIT Formula Projectにお話を聞きました。2024年と2025年リーダーの松本理希さん、次期リーダーの大下晴矢さん、そして顧問の吉田先生に、活動を通じて得られた学びと、ものづくりへの熱い想いを伺いました。

熱意から始まった挑戦と、苦労の先にある達成感

松本さんと大下さんの活動参加の原動力は、「ものづくりをしたい」という強い探求心でした。

松本さんは、新入生歓迎会で展示されていたフォーミュラ車両に魅了され、その見た目の迫力から活動への参加を決意。「面白そうだからやってみたい。そんな単純な気持ちでこの活動に参加しました」と語ります。一方、大下さんは新入生対象のオリエンテーションゼミナールで学生フォーミュラ活動を知り、「このチームでものづくりをやってみたい」という思いから挑戦を始めました。

しかし、活動は想像していた「自動車部」とは異なり、レーシングマシンの企画・設計から部品加工・製作,性能評価までを学生主体で行う本格的なものでした。松本さんは「自分が最初に思っていたことと8割くらい違ってました」と振り返り、大下さんも設計した部品の組み立て時に生じるミスや干渉の修正に、多くの時間を費やしたと苦労を共有しました。

なぜ大変なことも多いフォーミュラ活動を続けられるのか、松本さんは「苦しさ8割、楽しさ2割みたいな感じです。それでも、自分たちが作ったた車両を走行会に持っていき、実際に走ってる瞬間は、今までの苦労が全部吹き飛ぶような感覚を味わえます!」とはにかみながら語りました。特に、2019年以来の目標であった大会最終種目エンデュランス(耐久走行)を、チームリーダーとして臨んだ大会でトラブルなく完走できた瞬間を「人生最大の達成感」として挙げています。

17年の歴史と、軽量コンパクトを追求する独自性

広工大の学生フォーミュラチームは2008年に発足し、17年という歴史を重ねています。他の大学では活動が途切れることもある中で、HIT Formula Projectが毎年継続して大会に参加し続けていることに、チームの粘り強さがあります。

HIT Formula Projectの車両設計における哲学は、「軽量コンパクト」というコンセプトに基づき、大会にエントリーした中で「日本一軽い車両」を目指すというものです。

2025年大会のために開発した車両について、松本さんは「ハンドリング性能と軽量化に全ぶりしたマシンです。余計なものは一切つけないスタンスで、車両を設計しました」と、その設計思想を説明しました。具体的な工夫として、車両の内輪差を打ち消すデファレンシャルギアをあえて採用しない構造を挙げました。これにより運転の難易度は上がりますが、ドライバーが車両限界性能を引き出し易くするためにタイヤを13インチから10インチにするなど、車両特性やトレードオフを乗り越えて徹底した軽量化を追求しています。

こだわりの車体

「ものづくりは人作り」失敗を恐れず成長できる場へ

「ものづくりとは何か」という問いに対し、松本さんと大下さんはどちらも「成長できるもの」と語ります。ものづくりは作って終わりではなく、フィードバックをもらって改善をし、 また新しいものを作っていく。この過程のなかで成長してきたと大下さんは語ります。松本さんも、思い通りに動かないものを改良し、期待通りの動きをする瞬間に楽しさを感じると述べ、ものづくりを「成長できる場」として捉えています。

長年にわたり学生たちを見守ってきた吉田先生も、「学生フォーミュラは人作りだと思ってます」と断言しました。活動を通じて学生が大きく成長し、社会で活躍した後、大会の審査員やスタッフとして戻ってくることが、自身の目標であると語りました。15年以上に渡り活動を続け、着実に成長をしているHIT Formula Projectから巣立ったメンバーが将来学生フォーミュラ大会の運営メンバーとして戻ってくる日も近いでしょう。

最後に、中高生へのメッセージとして、松本さんと大下さんからメッセージをもらいました。


「学生時代に、多少ミスをしても許されるような環境で、チームの皆と目標に向かって、自分の頭の中で考えているものを形にする経験を積むのはとても大事な経験です。何かしらの物づくりに挑戦することが、後々の自分の人生に良い影響をもたらすでしょう。」(松本さん

「失敗しても成功しても、やってきたことの経験は必ず将来に残ります。目標を達成できたときの喜びだけでなく、失敗したときの悔しさからもたくさんのことが学べます。様々なことに挑戦して、多くの経験を積んでみてほしいと思います。」(大下さん

自らの手で困難を乗り越え、自己を成長させる場としての「ものづくり」。彼らの言葉は、未来の挑戦者たちに力強い一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。

広島工業大学 学生フォーミュラチーム「HIT Formula Project」2025年度大会概要

学生フォーミュラ日本大会2025の様子

広島工業大学チームは、2025年9月8日~13日に愛知国際展示場で開催された「第23回学生フォーミュラ日本大会 2025」に、18回目の挑戦として参加しました。

1. 車両コンセプト:「CR-25」

 本年度は「究極のハンドリングマシンで全種目完走を果たす」を目標に掲げ、前年車両から大幅に改良した「CR-25」を開発しました。

  • 目標の実現に向けた主な改良点
    • 高剛性ボディの実現:横曲げ剛性を昨年度比200%に高め、さらにボディ単体で1kgの軽量化を達成しました。
    • 低重心化・ワイドトレッド化:タイヤを13インチから10インチに変更し、重心高を320mmから251mmに低下させました。
    • 新開発シートの採用:東洋シート株式会社と共同で、FRP製ベースに衝撃吸収性の高いEPP(発泡ポリプロピレン)素材を使用したシートを開発し、ドライバーの快適性を向上させました。

2. 大会活動の概要

  • 車検
    • 機械車検:指摘事項は、軽微な8個の修正のみで通過しました。
    • 騒音試験:昨年悔しい思いをした騒音試験では、3年ぶりに悲願のクリアを成し遂げました!
    • 重量測定:全チーム中最軽量となる180.0kgを記録しました。
    • チルト試験・ブレーキ試験・ドライバー脱出試験・フラッグ試験:いずれも一発合格し、2022年以来となる車検全通過を果たし、念願の動的審査への出走権を獲得しました。
  • 静的審査 (Static Event)
  • 車検を通過した直後に行われた、設計審査・コスト審査では、車検の疲れの中でも準備していたことを悔いなく審査員に伝えることができました。翌日のプレゼン審査は、緊張しましたが無事にこなせました。動的審査 (Dynamic Event)
    • アクセラレーション(0~75m直線加速):5.234秒を記録し、単気筒エンジンクラスで3位の好成績を収めました。
    • オートクロス(1周のタイムアタック):走行直前にエンジン不調(二次エア吸入)によるマフラー破損に見舞われましたが、修復後に再チャレンジし、1分14秒897を記録しました。
    • エンデュランス(20kmの耐久走行):車両トラブルなく走行を完了し、6年ぶりとなる悲願の完走を達成しました!
    • スキッドパッド(8の字旋回):走行枠終了直前にコース上で前走車のトラブルが発生したため、時間切れとなり走行できませんでした。

3. 概要と結果

大会名第23回学生フォーミュラ日本大会 2025
開催場所愛知国際展示場(Aich Sky Expo)
大会結果総合順位 30位(エントリー数 64)
総合得点365.11点(1000点満点)
主な成果6年ぶりとなるエンデュランス完走
受賞MathWorks賞 第3位

今回の結果は、チーム史上過去最高得点と最高順位であり、充実した大会となりました。来年度に向けては、全種目完走を悲願とし、車両の完成度と信頼性の向上を目指すとしています。