【パートナーインタビュー】海の厄介者「クラゲ」を退治!世界がレゴブロックに見える研究者の挑戦
「電気の力はどうやって物理的な力に変わるのか?」──中学生の頃に抱いた一つの純粋な疑問と、深海という未開のロマン。それが、広島工業大学の安さんが、海の厄介者・クラゲを駆除する「水中ロボット掃除機」の開発に挑む原点です。環境問題の解決を目指しながら、小型ドローンで「実環境でモノが動く喜び」を追求する研究の最前線に、未来の技術者である中高生の皆さんがものづくりにのめり込むためのヒントを探ります。
日本の海を救う!「水中ロボット掃除機」の挑戦
安さんが取り組む研究は、海での作業用ロボットシステム全般にわたりますが、中でも特にユニークなのがクラゲ駆除用ロボットシステムです。温暖化や沿岸の人工物増加により、瀬戸内海などではクラゲの異常繁殖が深刻化しており、従来の漁船を使った人的な駆除だけでは対応が難しくなっています。
安さんが開発するのは、まさに「海版ロボット掃除機」。水中での吸引式駆除を可能にする小型水中ドローンシステムです。その特徴は、ただクラゲを「駆除する」だけでなく、「生態系に配慮した駆除」を目指している点にあります。クラゲが食べるはずのプランクトンを他の小魚のエサとして残し、生物多様性を守るために、どのタイミングで駆除を行うべきかという研究も同時に進めているのです。
、安さんが開発でこだわっているのは「小型化と実用化」です。研究を始めた当初は、研究室ではうまく動いても、波や濁りのある実際の海では思うように制御できず、「実環境で動かす」こと自体が大きな壁でした。また、従来の深海調査ロボットは大型で高コストだったものを「小型の船で運べるほど小さく、1人や2人でも海に入れて運用できるロボット」を目指し開発しています。多くの水中ドローンが「見るだけ」にとどまる中、安さんの研究室は「対象物にアプローチする技術」を強みとしています。クラゲの吸引やゴミの捕獲など、実際に海の中で「作業」を行うために高度な制御システムを研究しているのです。水中で安定した姿勢制御を保ちながら、いかに効率よくクラゲを吸引するか、ロボットの接近でクラゲが逃げないようにするにはどうするかなど、実環境ならではの技術的課題に日々挑戦しています。

すべての始まりは「モーターへの感動」と「レゴ」の遊び
安さんが現在の研究につながる興味を持ったきっかけは、子供の頃から海洋ドキュメンタリーを見て深海という未解明の環境に魅せられたこと。もう一つは、「モーターの仕組み」に受けた強い感動です。
特に、中学1年生の頃に初めて知ったモーターの原理は、安さんにとって運命的でした。「電気という目に見えないものが、実際に回転という目に見える動きに変わる」仕組みに「すごいな」と心底感動したことが、機械への興味を深める原点となりました。理科や技術の授業で、電気を流した瞬間にモーターの軸が目の前で回り出すのを見て、「見えない電気が、動きになる」ことを初めて実感したのです。
この感動から、安さんのものづくり人生が始まります。中学生時代には、科学関連の部活動で輪ゴムの力でプロペラを回す飛行機の競技会に参加し、翼の形を工夫するなどの手作りの経験を積みました。高校時代には、歯車やモーターが含まれた構造や力の伝達を学ぶタイプのレゴキットを使い、車などを製作する部活動に熱中していました。「どうやって回して、どうやって力を伝えるのか」を考える中で、機械への理解を深めていったのです。
ものづくりは「遊び」の世界を広げるレゴのようだ
安さんが研究で目指す理想は、クラゲ駆除における完全自動化、そして、海が広大であるという現実を踏まえた「協調型ロボットシステム」の構築です。一台の水中ドローンではなく、複数の水中ロボットや水上ロボットが連携し、広範囲を効率よく清掃する、未来の「軍ロボット」のようなシステムを構想しています。
研究の醍醐味は、「実環境で思い通りに動く瞬間」にあります。研究室のラボでは動いても、波や海水の濁り、潮の流れがある実際の海では動かないという難しさがあるからこそ、時間と努力をかけて作ったものが、厳しい実環境で目的を果たした時の喜びは格別だと言います。
先生にとって物づくりとは何かを聞いたところ、「趣味から仕事になったものであり、遊びの感覚に近いものだ」と安さんは語ります。「ある時期から、世の中の全てがレゴブロックのように見えるようになったのです。電子部品やモーター、センサーなど、あらゆるものが『これをどう組み合わせれば動くんだろう』というレゴの部品に見えるようになる。そうなると、遊びの感覚がぐっと広がり研究が進むのです。」
安さんの言葉は、ものづくりは難しい専門分野であると同時に、世界を新たな視点で捉え、試行錯誤を楽しむ「遊び」の延長線上にあることを教えてくれます。この「レゴの視点」を持てば、日常にあるあらゆるものが、皆さんの「ものづくり」のヒントになるかもしれません。

参考
安 鍾賢 AHN Jonghyun
工学部 機械情報工学科 講師